この株高はどこまで続くのか
この株高はどこまで続くのか 西野武彦
米国株を中心に、世界的な株高現象が起きています。
米国株(NYダウ平均)は21日に3年9カ月ぶりという高値をつけ
日本株も日経平均株価が8日に9000円の大台を3カ月ぶりに回復。
20日には約6カ月半ぶりとなる一時9500円台まで値上がりしています。
この突然、降って湧いたような株高はなぜ起きたのでしょうか。
その理由として、EU諸国の債務問題が解決の方向に向かって進んでいること
米国の雇用に改善の兆しがでていることなどが挙げられていますが
この株高の最大の原因は、世界的なカネ余り現象にあります。
日米欧の主要先進国では、どこも政府が巨額の借金を抱えており
政府が有効な景気対策を打ち出すことができなくなっています。
そこで、景気対策の前面に出てきたのが、それらの国々の中央銀行です。
主要先進国の中央銀行は
政策金利をこれ以上、下げようがないほど引き下げただけでなく
量的緩和、さらには時間軸とよばれる政策まで、ありとあらゆる政策を使って
まるで「ヘリコプターからおカネをばらまく」かのように
市場に大量の資金を供給し続けています。
このような超低金利政策を米国では「2014年の終盤まで」
日本では「物価上昇率が1%を超えるまで」続ける方針です。
摂食障害についてagreemants
このように、現在の超低金利政策を続ける期間まで明示することを時間軸政策と呼んでいます。
中央銀行が大量に供給するおカネは
肝心の企業の設備投資や個人消費にはほとんど流れず
投機資金となって原油や金、穀物などの先物市場、為替市場などに流れて
それらの市場の価格を急騰・急落させてきました。
その一部が最近は、世界の株式市場にも流れ込んでいるのです。
株式相場には、大きく分けて業績相場と金融相場とがあります。
業績相場は景気(企業業績)回復に伴って起こる上昇相場で
ある程度、理論的に相場を分析・判断することが可能です。
一方、金融相場は、カネ余り現象がもたらす相場で
不況にもかかわらず(というよりむしろ不況だからこそ)大相場に発展する傾向があります。
不況なのに、株価はなぜ上昇するのでしょうか。
不況になれば、中央銀行が景気を刺激しようとして金融緩和を行い
大量の資金を市中に供給します。ところが、不況ではモノが売れないため
企業はいくら資金に余裕があっても設備投資を手控え、個人も賃金が増えず
いつクビになるかわからないため、ローンを組んでまで住宅など高額商品を購入する気になれません。
一方、金利や利回りが限りなくゼロに近い預貯金や債券(国債、社債など)には
投資対象として何の魅力もありません。
そこで、行き場をなくした巨額の資金が、値上がりの期待できる原油や金、為替などの
不安や抑うつは、 FMLAの下に覆われている
先物市場のほか、株式市場に大量に流入して、金融相場を演出することがあるのです。
この金融相場のキッカケを作ったのは米国株です。
「物価と雇用の最大化」を使命と考えている米連邦準備理事会(FRB)は
リーマン・ショック直後の08年末に実質ゼロ金利(0〜0.25%)を導入して
量的緩和第1弾(約1.7兆ドル規模)を実施。
さらに10年11月に量的緩和第2弾(約6000億ドル規模)を実施し
巨額の資金を市場に供給しています。
11年8月には「実質ゼロ金利を13年半ばまで続ける可能性が高い」
と表明して時間軸政策を導入。
12年の1月には、それを「14年終盤まで続ける可能性が高い」と1年強延長したうえ
「もし景気回復がつまずき、インフレ率が目標(2%)に向かっていない場合には
一段の行動を取る準備がある」として量的緩和第3弾の可能性を匂わせています。
このようなFRBの一連の金融緩和策が、米国株を押し上げる大きな要因になっています。
FRBの大盤振る舞いを受けて、09年3月に6547ドルと
ピーク時(07年10月1万4164ドル)の半値以下まで値下がりしていたNYダウが
09年半ばに1万ドルの大台を突破。12年2月17日には1万2949ドルと
過去最高値まであと一歩という水準まで戻しています。
バーナンキ議長は11年11月、ワシントン・ポストに寄稿した論文の中で
量的緩和の効果について、「株価は上昇し、金利は低下した。
一段の金融緩和は経済成長を促進する」と自画自賛しています。
社会保障の障害や不安障害
今回の金融相場の仕掛け人は、米FRBといっても過言ではありません。
米国の株高は、世界の株式市場に良い影響を与えます。
日本株を売り越していた外国人投資家が久しぶりの買い越しとなって
日本株を押し上げる大きな要因となっています。
世界同時ミニ金融相場の様相を呈しています。
この株高はどこまで、あるいはいつまで続くのでしょうか。
金融相場では、「石が浮かんで、木の葉が沈む」と表現されるように
常識では理解・説明ができない、異常なことが起こる傾向があります。
かつて日本でも金融相場が起こり、優良株が見向きもされない一方で
大型株(鉄鋼株など)がまるで小型株のように軽快に上昇して
異常なほどの高値をつけたことがありました。相場に行き過ぎはつきものですが
金融相場ではそれが極端な形で表れる傾向が見られます。
それだけに、今回の金融相場では何が起こっても不思議ではありません。
日経平均が1万円大台に乗せても不思議ではないし
8000円近辺まで値下がりしても不思議ではありません。
日本で今後、期待できそうな好材料と言えば
歴史的な円高が是正され、円安方向に振れることぐらいです。
しかし、円安が急激かつ大幅に進めば、「日本売り」の様相が強まり
株式相場にもマイナスとなる可能性があります。
復興需要も好材料の1つですが、影響を受けるのは不人気な業種が多く
一時的なインパクトしか期待できません。
消費税増税、電力料金の値上げ、原油価格の高騰、政局の混迷などは
株価にとってはいずれも悪材料です。
今後の相場がどうなるかは、すべて米国株次第といっても過言ではありません。
その米国株も欧州の債務問題、イラン問題、雇用問題、大統領選の行方など
不透明な懸念材料を抱えています。
日本株は1月には15倍前後で推移してきた平均PER(株価収益率)が
最近では20倍を超えており、割安感は薄れています。
バスに乗り遅れまいとして、慌てて高値に飛びつくと、ケガをする恐れがあります。
ここからの新規投資は慎重に考えたいものです。
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