2012年4月29日日曜日

カンデル読んでる 脳に関するトピック


カンデル読んでる 脳に関するトピック

カンデルを読んでいて思ったこと、脳科学を勉強しながら思ったことなどの雑記です。

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うつ病は体の病

うつ病は多くの場合、心の病ではなく体の病だと思う。
辛い出来事、いじめ、将来への不安、職場でのストレス、
そのようなもっともらしい理由をうつ病の原因と考える人は多いかも知れないが、
うつ病というのは取り立ててこれといった落ち込むような出来事などが
なくても発症する場合は多い。

うつ病と診断された人には抗うつ薬が処方される。
うつ病が心の病だとしたら、
なぜ体に作用する物質に過ぎない薬が処方されるのであろうか?
体、とくに抗うつ薬は脳に作用するように作られているが、
脳の状態を薬によって変化させることでうつな気分を直そうとするからであり、
それは一定の効果をあげている。

身体の障害でも精神疾患をうむ

甲状腺機能障害というのがある。
甲状腺は喉にありホルモンを分泌する組織のひとつである。
この病気はその名の通り甲状腺の機能が障害をきたすものである。
実は、甲状腺機能障害でもうつ病のような精神症状が起こる。
うつ病と診断された患者であっても、
本当は甲状腺機能障害である場合がある。
この場合、いくら抗うつ剤を投与されたところで改善は難しい。
治療すべきは脳ではなく甲状腺なのだから。
甲状腺機能障害の治療には甲状腺ホルモン注射などがある。

米国の精神疾患診断に関する書でDSM-IV(ディーエスエムフォー)というのがある。
これは世界的な精神疾患の診断基準にもなっている。
精神疾患診断の本なので、もちろんうつ病の診断基準が載っている。
診断基準には甲状腺機能障害のような身体の障害によって精神症状が現れる場合があり、
そのような原因によって患者がうつ症状を呈している場合を
排除することと書いてある。

うつ病は心の病ではなく、体の病である。
うつ病の人に「がんばれ、くよくよするな」などと激励することはタブーだ。
それは足を骨折している人に「足があるんだから走れるよ」といって
走らせようとする行為に等しい。
うつ病のひとは、体ががんばれない状態だからがんばれないのである。
くよくよするしかない状態だから、くよくよしているのである。
骨折している人が足を骨折しているから走れないのと同じように。


去勢手術犬のために尿失禁

うつ病を治すために考えたこと

私は、うつ病になりやすい体質だと思うし、時々自分がうつであると思う。
精神科でそう診断されたことはないけれど、
うつ病というのがどのようなものかはわかるつもりだ。
私は、うつな状態というものが自分の精神に起因するものであり、
薬や病院での治療に頼りたくなかった。
自分の意志を強く持つことで治せると思っていた。
うつな自分に打ち克とうとした。
そうして10年ぐらい生きてきた。
10年経って確信したことは、
自分の意志ではどうにもならないということだ。

身体の状態というのは意志の力ではどうにもならない。 身体は物質であり、その状態は物質の力によらなければ変化しないということに気付いた。
私は今、認知神経科学と呼ばれる分野の研究をしている。
認知神経科学といってわかりずらければ脳科学と表現してもいい。
その過程で脳のこと、身体の医学的なことなどを勉強し、
自分のうつな状態を制御するすべを身につけつつある。
いまや私は、私のうつ病を克服しつつある。
私のうつ病があなたのうつ病と同じとは限らない。
だから私の編み出した方法があなたに当てはまるとは限らない。
それでも、たくさんのうつ病の人の中の何人かのうつを直すのに、
この方法が役に立てたらと思って書く。

身体を変えるもの:食べ物

身体は物質なのであるから、身体の状態を変えるには物質の力によらなければならないと言った。
薬はいかにも身体に変化を与えそうな物質だが、
そんな薬局に行かなければ手に入らないものを使わなくても
もっと身近なものがある。
我々が毎日食べている食べ物である。
普通の人は朝、昼、晩と三食食べるだろう。
多くの人はおやつをその合間に食べるだろう。
身体は食べ物で変わる。

以下、食べ物の摂り方のポイントを列挙する。
・炭水化物(米、パン、パスタ、砂糖)を控える
・脂肪はそれなりに摂る
・タンパク質(肉、豆)をたくさん摂る
・塩分を控えない

また、食べ物とは呼べないかもしれないが、サプリメント(ビタミン剤)の 摂取も奨励する。
・ビタミンB
・亜鉛
・鉄


"かゆみを断つ"

私の思う「根拠」

上に示した食べ物の摂り方に明確な根拠を示すことはできない。
私が試行錯誤し、自分の感覚を信じてやった方法であるから。
しかし、すこしだけ根拠らしいことを述べておく。
うつ病は代謝の障害に関わるのではないかと思っている。
代謝とは食べるものをエネルギーに変換して利用することであるが、
より詳しく言うとグルコース(糖)をATPというエネルギーとして取り出しやすい物質に変換することである。
炭水化物を分解すると糖になる。甘い砂糖はそのものが糖である。
代謝をよくするにはその原料になる炭水化物・糖をたくさんとればいいじゃないかという風に思うかもしれない。
確かにそうなのであるが、それは短期的にしか成功しない。
しかし、長期的には代謝を悪くするのである。

エネルギーの代謝

体はエネルギーとして糖を利用できないときは脂肪を分解して利用する。
糖が豊富にあれば、この脂肪を分解して利用することはしないし、
いずれその能力が低下してしまう。
そうすると脂肪は蓄える一方になってしまう。
代謝というのはこの糖を利用する経路と脂肪を利用する経路が十全に働いている状態ではじめてきちんと機能していることになる。
糖を利用する経路は働いているが脂肪を利用する経路は長い間使われなかった結果、機能が低下してしまった状態というのは代謝がきちんと働いていないことになる。
これが、炭水化物・糖をたくさん摂ることは長期的に代謝を悪くさせるということである。

炭水化物・糖を控えるというのは過剰に働いている糖を利用する経路の働きを抑えることに他ならない。
現代人の炭水化物・糖を摂取する量はかなり多い。
マクドナルドのセットを思い浮かべて欲しい。
ハンバーガーとコーラとフライドポテトを注文したとしよう。
コーラには砂糖がどっさり入っているし、
フライドポテトはデンプンの塊つまり炭水化物であり、
ハンバーガーの肉はパンに挟まれている。
肉とフライドポテトには脂肪・油が含まれているが、
それだけ炭水化物・糖があればそれら脂肪は利用する必要がなく、
貯蔵に回されるのみである。
牛丼を思い浮かべて欲しい。肉の下には大盛りのご飯がある。
ファーストフードは炭水化物が過剰な食べ物なのである。

脂肪をそれなりに摂ると書いたのは、
脂肪が一定量体外から入ってこないと、
脂肪を蓄積する傾向が強まるために脂肪の利用が妨げられるからだ。
脂肪は、長い飢餓の時代を経て進化してきた身体にとって重要なものである。
しかし、脂肪が恒常的に摂取されるならば、利用を躊躇しないようになるだろう。


プロザックは、体重減少を引き起こすん。

なぜうつな気分と代謝が関係あるのか、明言することは出来ないが、
血糖値の調整と関係があるのではないかと思っている。
血糖値が安定した値でないと、身体はエネルギーが十分にないと判断して、
行動を抑制する傾向になるのではないかと考えられる。
その結果、疲労感、倦怠感が起こり、生きる意欲が低下するのではないかと思う。

タンパク質とビタミン・ミネラル

タンパク質とビタミンの摂取については次のような理由を考えている。
うつ病と関わっている神経伝達物質として、セロトニンという物質がある。
これはトリプトファンというアミノ酸の一種から合成される。
アミノ酸の多くはタンパク質として摂取される。
タンパク質は様々な種類のアミノ酸がいくつも結合し鎖のようになることで
できているからである。
トリプトファンは肉に多く含まれる。
脳は他の臓器と同じく血管から栄養を吸収するが、
他の臓器と違うのは栄養を選択的にしか吸収しないことである。
セロトニンが大事ならセロトニンの飲めばいいと思うだろうが、
セロトニンはこの選択からもれてしまって吸収されないのである。
よって、その部品であるトリプトファンを摂るのである。
トリプトファンなら脳に吸収される。

セロトニンはトリプトファンを原料に合成されるが、
原料があってもそれをセロトニンに変換してくれる酵素がなければ
やはりセロトニンはできない。
この酵素はやはりアミノ酸からできるのでアミノ酸がたくさんつらなった物質である、タンパク質を豊富に摂るのが大切なのである。
また、酵素は亜鉛や鉄などのミネラルがないとその能力を発揮することはできない。
さらに、ビタミンBもその酵素が活躍するのに必要である。

酵素は脳だけにあるわけではなく、身体のすべての細胞にある。
先に述べた代謝に関係する酵素をきちんと働かせるためにも、
タンパク質・亜鉛・鉄・ビタミンBはとても大切なのである。

現代人は炭水化物過多でタンパク質が足りないひとが多いのではないだろうか。
自分のこれまでの食生活を思い返してほしい。
また、うつではなかった頃の食生活を思い出して、比較して欲しい。
私はそうやって振り返ったときに、いろいろと思い当たることがあった。
毎日家で食事を摂っていた時期とそうでない時期。
外食が多かったこと、ファーストフードが多かったこと。
それと当時の精神状態。関連があるような気がした。

もともとの傾向:遺伝的要因

ビタミン剤のようなサプリメントを摂ることに抵抗がある人は多いかもしれない。
私もそのひとりだった。
だけれども、食事だけで必要なビタミン量を補うのは大変なのである。
また、きちんとした食事をとっていても遺伝的な理由でそれでは足りない場合がある。


そもそもうつになってしまったのは何故なのか?
同じような食生活を摂っているひとが自分のようなうつにならないのに、
自分がなってしまったのは何故なのか?
それを考えたときに私はもとからそのようになりやすい傾向を持っていたからだと考えた。
そしてその傾向を生み出すものは遺伝子なのである。
ある遺伝子が機能障害をもっていても、大抵の場合、身体は複雑なシステムをもっているので、他の機能でその障害を代償することができる。
だから致命的な障害にならずに済むが、他のひとよりもほんの少しだけ脆弱になる。
その結果うつになりやすい傾向が生まれ、
そこに環境的な要因が加わることでうつになったのではないかと思う。

遺伝子の機能障害は珍しいことではない。
大抵の人が何らかの遺伝子の機能障害をもっているのではないだろうか。
しかし、致命的ではないし、十分他の機能で代償できるので、それを意識せずに済むだけだと思う。
遺伝的に酵素の合成能力やビタミンやミネラルの吸収能力が普通より劣っていたら?
そしたらサプリメントという少し不自然な形で摂取してもいいのではないだろうか。

治るまでにかかる時間

うつ病はすぐにはよくならない。
私が自分の身体が変わったと最初に実感したのは上記のような食事を心がけるようにして一ヶ月経ったころである。
二ヶ月経つ頃にはその実感は強くなり、月単位でその実感は強まっていった。
少し良くなったからといって頑張るとまたもとに戻ってしまったりする。
私は1年ぐらい時間を見るのがいいのではないかと思う。
今年1年はがんばらなくていいや、と自分を許してあげるのがいいと思う。
1年後の自分にがんばる役はあてがってしまえばいい。
1年後の自分はよろこんでその役を引き受けるでしょう。
がんばらない自分を許してあげましょう。

最後に

私は、炭水化物を控えること、タンパク質をたくさん摂ること、ビタミンB・亜鉛・鉄をサプリメントの形で摂ることを試した。
その結果、今、私の身体の状態は調子が良かった頃の状態に戻りつつあるのを実感している。
身体の状態が戻りつつあるということは心の状態も戻りつつあるということである。
落ち込むことはあっても、布団から出られない、何もする気が起きない、絶望感で胸がいっぱいになる、死ぬことばかり考える、何もかもどうでもよくなる、人とコミュニケーションをとるのが怖くなる、そういう風な状態にまでなることはなくなった。
人は、辛いことや嫌なことがあっても、しぶとく立ち上がって自分の成すことを できるのである。
それができないのはそれができる状態ではないから。

うつ病は心の病ではなくて体の病です。
うつ病だけでなく全ての精神疾患がそうだと私は思っています。
うつの時はうつでいいのです。がんばらなくていいのです。
うつの時は、心をどうにかするのではなくて、体を良くすることを考えてください。



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