不老不死への科学 遺伝子多型と老年医学 老化研究の概論 klotho遺伝子 テロメア 活性酸素 DNAの損傷と老化 遺伝子多型と老年医学 老化の進化的共通性 早老症と老化抑制遺伝子 細胞不死化と再生医療 脳の老化 人体冷凍保存(クライオニクス) 老化を抑制する薬 不老不死を実現する方法
第6章 遺伝子多型と老年医学
人の老化には個人差がある。若くしてふけて見える人もいれば、年齢よりも若く見える人もいる。この老化の個体差の原因を探ることで老化を規定する大きな要因を知ることができる。その一つとして、環境的な要因が知られているが、長寿家系が存在することから分かるように遺伝的な素因も老化の個体差に関与していることが分かる。この遺伝素因の本態が遺伝子多型である。しかし、問題はそんなに単純なものでもなく、環境要因によって遺伝子の発現量が変化したり、同じ環境要因にあっても遺伝素因によってその影響の度合いが異なってきたりと、環境要因と遺伝素因が複雑に絡まりあっている状況がある。そこでその解析のために連鎖解析や、相関解析と呼ばれる統計学的手法が持ちら れている。
ヒトゲノムの全塩基配列のほとんどはどの個人でも同一なのだが、わずかに個人差の見られる塩基配列が存在し、この違いを遺伝子多型と呼ぶ(例としてはABO型の血液型がある)。
6.1.1 連鎖解析
連鎖解析とは、単一遺伝子病の原因遺伝子変異を探索する際に用いられる方法で、多くの家系を用いて行われる。ある遺伝子多型の遺伝子型を決定し、ある遺伝子型を持っている人だけが調べたい単一遺伝子病に罹患しているかを調べ、もしそうならその近くに原因となる遺伝子へんいが存在するだろうと考える。これは遺伝子型の遺伝的距離が小さいほど組み換えの確率も小さいということに基づいている。しかし、多くの家系を集めるのは非常に困難で、せいぜい数世代を解析の対象としていることから、比較的感度が低くなる。老年病のように多くの遺伝子多型の影響と多くの環境因子の影響によって発症する確率が変動するような疾患においては連鎖解析は用いにくい。
6.1.2 相関解析
連鎖解析の問題点から、老年病のような多因子疾患の解析には感度の高い相関解析が用いられる。この方法は、患者群と健常対照者とについてある遺伝子多型の遺伝型が偏りが存在するかどうかを調べる方法である。この遺伝子型をもっている人の割合について患者群と対照者郡で大きな偏りがあればその遺伝子多型の近くに疾患の原因となる遺伝子型があるだろうということになる。ただし、多くの世代を経た結果を解析しているために、その間に組換えが起きない遺伝的距離は非常に小さく、少しでも離れると相関が検出されなくなる点が問題である。
6.1.3 老年病関連遺伝子研究の現状
!doctype>